研究概要
当研究室の研究テーマは、エージェント、知的Web、ソフトウェア工学、データマイニングの4つの分野に渡っています。
いずれもこれからの21世紀の高度な情報社会を担う先進的情報技術(IT)の分野です。
これからの情報社会のありかた、これからの情報社会を支える新しい技術に興味津々の学生の皆さんがワクワクするような面白い
テーマがたくさん揃っています。大須賀教授,田原准教授,折原客員教授,川村客員准教授,清助教を中心に,精力的に研究を進めています。
★ エージェント
インターネットに代表されるネットワーク技術は、ビジネス、教育、医療、公共サービスなどの分野でも活用され始め、
我々の生活に無くてはならないものとなりつつある。しかし、これらのネットワーク上で情報は広範囲に分散し、その内容や構成
は日々変化し続けている。また、新しいモバイル機器の登場によってネットワークの利用の場が広がり、利用者の求める情報も
多様化している。このため、ネットワーク上で動作するソフトウェアは、各所に分散した情報を有効活用し、環境の変化に柔軟に対応し、
利用者の多様な要求に的確に応えるものでなければならない。
このようなソフトウェアを簡単に作る方法はないものだろうか。これに対するひとつの解が「エージェント指向」の導入である。
エージェント指向とは、オブジェクト指向をさらに発展させたプログラミング・パラダイムである。複雑になりがちなネットワーク上のソフトウェアも
、エージェント指向の枠組みで捉えることによって自然に表現され、簡素化される可能性がある。そこで、以下の観点からエージェント
指向技術の研究を進めている。
一般に、オブジェクト指向におけるオブジェクトに、移動性や自律性、協調性などを加えたものがエージェントと呼ばれている。これらの特性によって、ネットワーク上のさまざまな場所へ移動し、利用者の要求に応える処理内容を自ら判断し、他者と協力して処理を進めるようなアプリケーションを簡単に構築できる。
このようなエージェントのためのプログラミング言語や実行環境は多数研究されているが、まだ決め手となるものが現れていない。Javaモバイルエージェント技術、エージェント間通信言語、プランニングや学習といった技術を駆使して、独自のエージェント指向ミドルウェアを開発中である。
エージェント指向ソフトウェア開発のための方法論や支援環境の研究を進めている。エージェントは状況に応じて柔軟に動作するため、動作の正当性や安全性を保証するしくみが必要となる。これには、フォーマルメソッドを用いた自動検証や、オブジェクトパターンの考え方を応用したエージェントパターンの適用が有効と考えている。
近い将来、異種エージェントがネットワーク上に多数存在し、それらが各所に移動しながらさまざまな処理を行なうことになる。これに向けては、ミドルウェアの標準化、エージェントの移動やエージェント間通信の相互運用性の確保、セキュリティや信頼性の研究が重要である。
エージェントの特性を生かしたアプリケーションの開発を行なっている。これまでに、モバイル環境向け検索エージェント、ヒューマンナビゲーションエージェント、ドライバー情報支援エージェント、電力系統巡回点検エージェント、プラント診断保全エージェントといった新しい実用アプリケーションを開発し、エージェントの有効性を実証してきた。
これまでのインターネットは人が見て楽しむことを前提に作られてきた。これをソフトウェアが機械的に読み取って活用するものへ変えていこうというのが、 WebサービスやセマンティックWebの考え方である。これにエージェント技術を適用すれば、インターネットの利便性は飛躍的に向上する。そこで、Web サービスの基本技術であるXMLやSOAP、サービスディレクトリ(UDDI) をエージェント指向の枠組みで扱う研究を進めている。Web サービス・エージェントは、利用者が求めるサービスをサービスディレクトリから探し出し、処理手順や呼出し結果の組合せ方を考えながら適切に処理を進める。
★ 知的Web
Webインテリジェンス(Web Intelligence)は、Webから有用な情報を効率よく取り出し、使い易い有効なサービスを構築するために、Webを対象とする検索技術、データマイニング技術などのWeb技術に人工知能(AI)を適用したものである。Webインテリジェンス技術やその応用について研究を進めている。その研究事例としてオントロジー構築サービス「ONTOMO」を開発した。
セマンティックwebは、1998年にw3cのティム・バーナーズ・リーによって提唱された「情報リソースに意味(セマンティック)を付与することで、人を介さずに、コンピュータが自律的に処理できるようにするための技術」である。情報リソースに意味を持たせ、コンピュータが自律的に処理できるようにするためには、情報リソースにメタデータを付与しオントロジーで意味の理解を補足してやることが有効である。メタデータは「情報に関する情報」であり、これを使うことによってコンピュータは情報リソースの意味を理解できるようになる。つまり、情報リソースにあるデータがどんな情報を意味しているかを示す情報である。オントロジーは「ある特定分野の概念や知識」であり、「語彙の定義」や「語彙と語彙の関係」を記述している。セマンティックwebは、XML、 XML Schema、 RDF、 RDF Schema、 OWLなどの標準およびツール群から構成されている。XMLはwebページの記述言語であり、RDF(Resource Description Framework)はメタデータの記述言語(記述の枠組み)である。セマンティックweb技術を使いインターネットを単なるデータの集合から知識のデータベースに進化させるための研究を進めている。
Webサービスとは、機能を利用単位(サービス単位)にコンポーネントにまとめ、さらにカプセル化して隠蔽し、インターネットから利用できるようにしたものである。各コンポーネントを疎結合的に構成するので、ネットワーク上に分散した機能(アプリケーション)を連携して利用することができる。WebサービスはXML,HTTP等のインターネット標準技術をベースにしている。その中核技術として、SOAP(Simple Object Access Protocol)、WSDL(Web Services Description Language)、UDDI(Universal Description Discovery and Integration)がある。Webサービス指向アーキテクチャとは、Webサービスをこのような技術をベースにサービスの集まり(連携)として構築する設計手法である。Webサービス指向アーキテクチャによるサービス構築手法について研究を進めている。
★ ソフトウェア工学
ソフトウェアの大規模化・複雑化が進む背景には、ハードウェアの進歩とともに、市場のニーズの多様化・複雑化がある。しかも近年はそのようなニーズが急速に変化するため、ソフトウェアの方も変化に迅速に対応する必要がある。そこで、このように多様かつ複雑で急速に変化するニーズを体系的に整理・分析し、ソフトウェア製品に的確に反映するために、要求工学という技術分野が確立している。特に、要求項目を抽象レベルと論理的関係に従って整理・分析するゴール指向要求分析手法が近年注目されている。そこで、ゴール指向手法の実適用性向上を目指して研究を進めている。
近年,ソフトウェアの活躍する場面が広がり,環境の変化に応じて,みずからの構成や振舞いを変化させることのできる自己適応システム(self-adaptiveシステム) の実現に対する期待が高まっている.自己適応システムとは,みずからの目的と与えられた制約を管理し,環境や内部状態の変化に応じて振舞いや構成を切替えることのできるシステムであり,QoS(Quality of Service) が要求されるアプリケーションサーバやネットワークシステムに対してだけでなく,組込みシステムやロボットに代表されるユビキタス環境下のシステム,さらには日々新しい攻撃方法が出現しているセキュリティ分野においても,その適用が期待されている。しかしself-adaptive システムの実現のためには,ソフトウェア工学の観点からもまだまだ解決すべき課題は多い。これら課題の解決に向けて、self-adaptiveシステム構築手法について研究を進めている。
★ データマイニング
★ 応用事例